福岡県の最南端に位置する大牟田市。山と田園に囲まれたのどかな一帯に佇む白鷺保育園は、昔ながらのお寺の保育園だ。
「私たちが出会う人は、自分の人生を素敵に彩ってくれる大切な存在。子どもたちがそう感じたり学んだりできるように、日々一生懸命保育に臨み、一人ひとりの子と向き合っています」
穏やかな口調でそう語るのは、園長でありながらお寺の僧侶も務める西山先生。こちらの園では仏教の教えに基づき、「いのち」を深くみつめる人を育てることを教育方針として掲げている。
農村地域ならではの自然豊かな環境
福岡の中心街・天神から園の最寄駅である新栄町駅までは、西鉄電車特急で約1時間。そこから車で12分ほど走ると白鷺保育園の園舎が見えてくる。大牟田市内には新幹線の停車駅もあり、博多駅まで約30分で到着する。田畑の中の少し分かりにくい場所にあるが、周辺には駅が多く交通利便性が高いエリアだ。
──こちらの園は通勤しやすい場所にありながらも、自然豊かな市街化調整区域内に位置しているのでのびのびとした雰囲気が魅力ですね。
西山園長「白鷺保育園は私の祖父が始めた保育園なんです。このあたりは昔から農村地域なので、田植えなどで大人が忙しい時期に、お寺で近所の子どもたちを預かっていたことが私たちの保育の始まりなんです」
晴れた日は園外に出て田園地帯を散歩することも多いのだそう。田んぼの風景や季節の植物、昆虫といったさまざまな自然に触れることができるのも、この環境だからこそ。
近隣に住む人たちも、子どもたちの姿を見ると気さくに声を掛けてくれるのだとか。地域のあたたかい繋がりの中で保育ができることは、白鷺保育園で働く魅力の一つといえる。
きっとこれが私の最後の仕事。保育園で働く面白さ
実際に白鷺保育園で働いている二人の先生たちにも話を聞いてみた。
出産、育児を経て再び保育現場に戻ってきた桝屋先生と、医療の世界から保育業界に転身した森田先生。それぞれ異なるキャリアを持った二人だが、保育に対して熱い気持ちを持っていることは共通している。
──お二人が保育の仕事をすることになったきっかけはなんですか? また、実際にこちらの園で働いてみてどう感じましたか。
桝屋先生「私は生まれも育ちも大牟田市なんです。新卒で就職した保育園を出産を機に辞めて、育休明けの転職先を探しているときに白鷺保育園に出会いました。園長先生が担任の先生たちと一緒に保育をしているのが印象的で、私もここで保育をしてみたいと感じたことが就職のきっかけですね。現在は子育てと並行して仕事をしていますが、子どもが体調不良になったときも『休んでいいよ』『帰っていいよ』と同僚のみんなに理解してもらえて、びっくりするくらい働きやすいですね。保育現場に戻ってきてよかったって思います。毎日楽しいです」
森田先生「私はもともと保育業界ではなく、医療の世界でMR(※)として働いていました。昔から保育士には憧れていたんですが、ピアノが弾けず諦めてしまい……。結婚をしてMRの仕事を退職し、しばらくは専業主婦になって子育てをしていましたが、自分の育児経験を活かして保育をしてみたいと思い立ち、短期集中で勉強して保育士資格を取得しました。一度諦めた夢が叶い、今はこうして白鷺保育園で保育士として働くことができて……。きっとこれが、私の最後の仕事かな、と思っています。資格取得のために勉強した内容が、最近は目の前の子どもの姿や発達の様子と結びついていくのを実感し、保育の面白さを味わっています」
※Medical Representativeの略称。医薬情報担当者。
経験年数やキャリアに関係なく「分からない」「教えて」を言い合える関係性
──森田先生は異業種からの転職なんですね。
森田先生「そうなんです。異業種で働いていたからこその強みもあるかもしれません。前職では普段からパソコンを使っていたのですが、保育園ではパソコンに慣れていない先生も多くて。保護者との連絡もICTを活用するようになってきたので、他の先生が苦手な部分を私がサポートさせてもらったり、使い方を教えたりしています。だけど保育のことはまだまだ勉強中です。保育のことで分からないことがあると、すぐに他の先生に聞いちゃいます!」
──異業種で培った経験を活かしつつ、分からないことは他の先生を頼っているのですね。
森田先生「素直に『分かりません、教えてください』って言える環境がいいですよね。怒られたらどうしようって思って萎縮してしまう人も多いと思うんですけど、ちゃんと『分かりません』と言えるかどうかで職場環境も変わってくる気がします。一人ひとりの考え方や保育観が違う中で、お互いの意見を尊重し、個々の特性を活かせたらいいのかな。その上で共通認識を持って保育をすることが大切だと感じています」
桝屋先生「ベテランの先生たちも若手の意見をちゃんと聞いて頼ってくれるので嬉しいです。いつも『こういうのはどう?』とか『なんか良いアイデアない?』と聞いてくれるので、やりやすいですね」
──みなさんがそれぞれの特性を活かし、協力し合って保育をしていることが伝わってきます。
森田先生「今後はもっとクラスの垣根を越えた交流を増やしていけたらいいなと思っています。そうすることで職員同士のコミュニケーションもさらに活発になるし、自分が担当しているクラス以外の子との関わりも増えるので、園全体で子どもたちを見守る体制を整えていける気がします」
桝屋先生「私が以前働いていた園では、異年齢で散歩に行っていました。年長さんと2歳児さんが手を繋いで歩いたりしてましたね」
森田先生「そうそう、そういう機会を増やしていけたらいいよね。私たちがアイデアを出すと園長先生もきちんと受け取ってくれるので、これからもどんどんアイデアを出していけたらいいなと思います」
「子どもが好き」だけでは務まらない仕事だからこそ、柔軟さと責任感が求められる
──やりたいことを気軽に話し合えるお二人の関係性も素敵です。アイデアを実現するためにはこれから一緒に園をつくっていく仲間が必要かと思うのですが、どんな人と働きたいですか?
桝屋先生「私は大きく分けて4つですね。相手の立場で物事を考えられる人。表情豊かで責任感がある人。周囲の人の意見を聞き入れることができる人。自分のやり方を絶対視せず、臨機応変に対応できる人」
森田先生「いいね。私もほぼ一緒です。勉強した通りの結果が得られないとか、理想と現実が違うということはよくあります。子どもたちも日々成長し、変化していきます。昨日まではうまくいった手立てが、急に上手くいかなくなることも珍しくありません。そっぽ向いて『いや!』って言われちゃったりね(苦笑)。あとは家庭環境などが理由で、甘えたり不安定になったりする子もいます。そういった子どもの日々の変化や多様なバックグラウンドを理解した上で、責任感を持って一緒に頑張ってくれる人。そんな人と一緒に働きたいと思っています」
桝屋先生「保育の仕事は子どもが好きという気持ちだけで続けていくのは結構難しいのかな……とも思います。保育といっても、子どもたちとの関わり以外にも色々な仕事がありますから」
森田先生「そうですね。子どもたちは大人にとって不都合なことや予想外なことをするし、いつも大人にとって“かわいい姿”なわけではない。そういう前提を分かった上で仕事をしないと、理想と違ったとか思っていた保育の仕事ではないとか、保育をしながら負の感情を抱えてしまう可能性もありますよね」
──具体的に教えてくださってありがとうございます。お話を聞きながら、保育に対する思いの強さやお二人の関係性の良さを感じました。
桝屋先生「まだ出会って一年も経ってないんですけどね(笑)」
森田先生「笑いのツボは合うよね(笑)。園全体で見ても、職員間のコミュニケーションはしっかり取れていると感じます。ただ、物理的な垣根があり、クラス同士の交流がなかなかできていないことが課題です。先ほどお伝えしたように今後はもっとクラス同士の交流の機会を増やしていけたらいいなと思っています」
目的を明確にした上で柔軟に発想の転換を
──先生たちのお話を聞き、職員間で積極的に意見を交わし合える職場環境だと感じました。その背景には、西山先生のどのような思いがあるのでしょうか。
西山園長「何事も目的を明確にして実践することが大切だと思っています。保育をしていく上で、何のためにやるのかを考えることが重要です。行事や保育内容など、今までと同じやり方にこだわる必要はありません。せっかくやるなら意味のあるものにしようと職員全体に伝えています。毎年恒例だからという理由でなんとなくやる行事なら、いつもと違ったやり方に変えてもいいと思います。たとえば、今までは年に一度、食育の行事でクッキングをしていたのですが、今後はもっと頻度を増やして行事ではなく日常に繋がる形に転換していくことにしました」
──目的をしっかりと見つめた上で、新しいやり方に転換していくのですね。
西山園長「そうですね。今までは遠足で動物園に行くのが恒例でした。そのことについては私も疑問視していなかったのですが、職員から『行き先にこだわらなくてもいいじゃないですか』と言われたので、来年はどうしようかなと考えているところです。そんな感じで、職員たちも以前より発想転換ができるようになってきています。職員たちから『これやってみたい』『こうしたい』と積極的に意見が出る職場にしていきたいですね」
他者は人生に彩りを与えてくれる大切な存在
──西山先生は、どんな人と一緒に働きたいですか。
西山園長「他人を尊敬できる人と一緒に働きたいです。仏教の基本でもあるのですが、人との繋がりを大切にすることをすべての軸としています。そのためには自分自身のことも大切にする必要があります。自分を褒めるだけでなく、うまくできない自分も認め、失敗してもまた挑戦していく姿勢を持つことが大切です。他の人と協力し、学び、輪を広げて大きくなっていくこと。仏教の教えを伝えきることは難しいのですが、そういった在り方や姿勢の大切さについて職員たちにも伝えているつもりです」
──西山先生の「保育園は自分の人生を素敵に彩ってくれる場所」という言葉がとても印象に残りました。
西山園長「これは昨年の卒園式で年長さんたちに贈った言葉なんです。私たちの園では“まことの保育”という仏教の教えに基づいた保育を実践し、自己肯定感と非認知能力を育てることを目標にしています。そのためあまり言葉で表現することは少ないのですが、私たちが出会う人は、自分の人生を素敵に彩ってくれる大切な存在であることを子どもたちに知ってほしいと考えています。まだまだ園全体に浸透しきれていないという課題はあるのですが、今までやってきたことを今後も続けつつ、そういった考え方を浸透できるような場を設けていきたいなと思っています」
昔ながらのあたたかな雰囲気と豊かな自然環境の中で、従来のやり方に捉われない新しい保育を模索し続ける白鷺保育園の先生たち。取材中も終始気さくに話しかけてくれて、あたたかく心地よい時間だった。柔軟性のある先生たちが多いからこそ、子どもだけでなく職員一人ひとりもありのままの自分の姿を表現でき、日々の保育にも楽しく向き合うことができる。まさに、「自分自身の人生も彩ってくれるような保育園」だと感じた。今後、この場所でどんなアイデアが生まれ、どんな形となっていくのか楽しみだ。
法人名 | 社会福祉法人 白鷺福祉会 |
園名 | 白鷺保育園 |
所在地 | 福岡県大牟田市大字岬2923番地1 |
電話番号 | 0944-51-5777 |
園児数 | 70人 |
職員数 | 22人 |
募集職種 | 保育士 |
仕事内容 | 0~5歳までの乳幼児の保育と幼児教育 |
雇用形態 | 保育士(1)常勤職員(2)短時間パート職員 |
給与 | (1)204,100円~ 新卒基本給145,100円+各種手当の合計 (2)時給1,070円+資格手当 |
待遇 / 福利厚生 | 交通費(2㎞以上~10㎞未満2,000円、10㎞以上4,500円) 雇用、労災、健康、厚生年金、退職共済加入 |
勤務地 | 白鷺保育園(福岡県大牟田市大字岬2923番地1) |
勤務時間 | (1)7:15~18:15までのシフト制で実働8時間 18:15~18:45まで延長保育有 (2)希望の時間 |
休日休暇 | 公休105日(1年単位の変形労働時間制) 年末年始休暇(12/29~1/3)) |
応募資格・条件 | 保育士資格(必須) 幼稚園教諭免許(必須ではない) |
求める人物像 | 人を尊敬することが出来る人 |
選考プロセス | 園まで問い合わせいただき、面談を行う |
ホームページ | https://shirasagifukushikai.or.jp/ |
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