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こどもも大人もみんなが居心地よく
自分で考えて体感できる場所

ひとりじめをしたくなるほどの豊かな自然に迎えられて


今回、訪れたのは、熊本県水俣市。

熊本県の南端、鹿児島県との県境に位置する、人口2万3,000人ほどの街だ。

水俣市には博多駅から新幹線で約1時間と少しで行くことができ、思っていた以上に近い。新水俣駅に到着し、5分ほど歩くと『はつの・あそびの森こども園』が見えてきた。

園に到着すると、こどもたちの楽しそうな笑顔と穏やかな空気をまとう先生方が出迎えてくれた。

まずは、園長の田中先生に園内を案内してもらった。

「はじめての水俣はどうですか?モノクロ写真のイメージだったり、工場の煙がゴウゴウと上がって排水がいっぱい流れてて…みたいなことを思う方が多いんですが、今では自然が再生し、山と海に囲まれた豊かな場所なんですよ」

園庭から景色を見渡すと、紅葉が始まっている木々が目に入ってくる。

この街にそんな過去があったとは思えないほど、ここから見える景色はあまりにもきれいで、なんだかひとりじめをしたくなる。そんな場所だった。

保護者や地域の人も巻き込んだ取り組み

 

園庭には立派な築山が。これは一体…?

「この築山は、今年(2022年)の9月に職員有志で作りました。これまでもウッドデッキや砂場、パーゴラ(つる棚)などを、保護者さんをはじめ、地域の人たちと作ってきましたよ。保育園やこども園を選ぶとき、70%の方は保育理念に共感するかどうかではなく、“家から近いかどうか”で園を選ぶそうです。だからこそ私は、親御さんを園の活動にどんどん巻き込んでいきたいと考えているんです」

ーー その一環でこの築山を作ったんですか?

「はい。築山だけでなく、遊具もみんなで作りましたよ。保護者の方たちは、はじめは単なる利用者、サービスを受ける側っていう意識が強いんですが、それではなかなかうまくいかないことが多いんです。だから、ともに子育てをするプレイヤー・仲間みたいな気持ちで園の活動に参加してもらっています。

ワークショップを開いて、一緒に汗をかきながらいろんな話をしながらやっていくと、少し心の距離が近くなるというか。親としても、自分が携わった遊具で遊んでくれているかな?って気になりますよね。そこから保育に興味関心が生まれるのも狙いです。

何百万円もする立派な鉄製の固定遊具を揃えていても、こどもに任せて遊ばせることができず、常に保育士が見張っていないと危険なんですよね。うちの遊具や築山は、こども目線で考えて、こどもたちだけでも安心して遊べるように作っているんです」

ーー 保護者だけでなく、地域の人も関わっているんですね。

「そうなんです。街の大工さんや植木屋さんとか、いろんな方々が関わってくださっています。地域と一体となることでみなさんも『保育者』としてこどもたちを見守ってくださいますし、街の賑わいにもつながっていると感じます。

ときどきこどもたちの様子を見に来てくれて、こういう遊び方するならこういう木もいいよねとか、こんな植物の種を蒔いてみたら?とか、いろんなことを教えてくれるんですよ。今度シロツメクサを育ててみようかって話をしていたところです」

こどもの主体性を伸ばす環境作り


ーー 普段の園内は、大人の存在があまり目立たない感じがしますね。

「あえてそうしています。こどもたちの尊厳を守って、ちゃんと人として接することを大切にして、そうするとこどもたち自ら『こうしたい』『これはおかしい』という想いや考えを教えてくれるんです。まだ生まれて5年以内の子たちでも、真摯に対話ができるんですよ。彼ら彼女らは、大人が思っている以上に論理的思考を持っているんだって気づかされることがたくさんあります」

ーー 元々はどのような背景で主体性を育む取り組みを始めたんですか?

「一方的に課業に取り組ませたり、一斉に昼寝をさせるなど、大人の都合に合わせた保育に疑問を持っていたんです。そういった違和感を一つひとつ検証しながら改善していくなかで、こどもたちの主体性に重きを置き、異年齢保育やおむつなし保育、自発的に遊べるような園庭作りを取り入れるようになりました。

こどもたちがそれぞれのペースで成長していくことで自我が芽生え、自信をつけたり達成感を味わったりするんです。それをそばで見守っている保育士たちも、日々の変化を喜び合いながらモチベーション高く励んでくれています。

こどもたちは、失敗したり喧嘩したり、いろんな体験を通じて学んでいる最中なんですよね。実はすべて管理している方が楽ではあるんですけれども、そうすると段々大人を信用できなくなっていく。主体性や自分で考える力もつかなくなってしまいます。

もちろん入園したてで慣れない子には、はじめは1対1で関わり合いながら、環境を知っていってもらいます。そうしていくうちに少しずつ慣れて、自分でやりたいことができるようになっていくので、徐々に保育士も離れていくことができます。この距離感こそが保育士の専門性だと考えています。

大人の気配がしないということは、離れていても安心できているということ。みんな不安もないし、怪我をしそうな雰囲気もない。自由に主体的に活動してもらうためにも、安全な環境整備に徹底的にこだわっています」

ーー たしかに、遊具も含めて、環境作りにすごくこだわっているように感じました。

「はい。はじめは失敗だらけでしたけどね(笑)。例えばブランコですが、素材もいろいろ工夫して、木とかタイヤとかを試しました。それでも当たると痛いでしょう。当たりどころによっては圧迫で切れたり打撲であざができたりしてしまうんです。もっとやわらかくて丈夫な素材がないか探していて、たどり着いたのが綱でした。

綱を作っている工場に問い合わせて、安全なブランコをいかにして作るか、みんなで知恵を出し合いながらなんとか形していきました。ですが椅子の部分が網状になっているので、3歳以上の子が座ると、お尻が足先より下がってこぎにくくなってしまって。そしたらなんと、こどもたちが自ら工夫をして、ウレタンの積み木をはめて座りやすくしたんです。あっという間にそのやり方がみんなに広がって、自然と定着しました。革新的な発明だ!と当時は盛り上がりましたよ。

ただこれで完成というわけではなく、どの年齢の子にも使いやすくて安全な遊具を作るために、まだまだアップデートしていく予定です」

地元水俣が好きになる野外活動


ーー こどもたちの活動で特徴的なものはありますか?

「野外活動ですね。みんな森で遊ぶのが好きなんですよね。『次行ったら秘密基地を作ろう』というように、その日を心待ちにしているくらいですよ。

そうした自然のなかでの活動を通して、地元を好きになってもらえるといいなと思っています。こどもって、体験したこと、自分で実際やったことじゃないと理解できなくて。自分たちが楽しいな、綺麗だなって思わない限りは、自分たちの住んでいる場所に愛着は湧かないんですよね。あの子たちが大きくなったときに、この素敵な街や豊かな自然を残そうと一歩を踏み出してくれると嬉しいです」

ーー 自然を通して学ぶという話はよく聞きますが、「地元愛を育む」というのは新しい気づきですね。

「田舎といえども、家からここに来るまでドアツードアの世界なんですよね…。どこでもドアみたいに、パッと車に乗ってパッと降ろされて、という感じなので、行き帰りに『あそこに鳥がいるよ』とか『あの花、なーに?』とか、そういう発見をする時間がないんです。こどもの時間、こどもらしい時間が取れない。だからこそ、それを守る園でありたいなと思っています」

野遊びのプロとともに日常的に外へ繰り出す

 

この園で働いて20年目になる、立杉先生にもお話を聞いてみる。
立杉先生は、主幹教諭として園のまとめ役を担っているそうだ。

ーー こちらの園では、野外活動に力を入れていると園長からお聞きしました。

「はい。散歩や外遊びが主で、バスに乗ってお出かけすることもあります。よく行くのは、『エコパーク水俣』や『グリーンスポーツみなまた』という場所ですね。自然が豊かでとてもいいところです。鉄製の遊具だけではなくて、自然とどう関わって遊んでいくのかを肌で感じてほしくて。3〜5歳児は、山や川に行くことも多いですよ」

ーー 日頃から山や川にも行くんですね!

「川遊びや遠出をするときは、地域に詳しいうえに救命救急等の資格も持つ専門の先生がついてくださるんです。私たちも学ぶことが多いですね。出かけるということはリスクも伴うので、プロの方がそばにいるのは親御さんたちにとっても安心材料になっていると思います」

今も理想の保育の在り方を模索している途中


ーー 立杉先生は転職で『はつの・あそびの森こども園』に来られたそうですが、どんな印象ですか?

「以前はこの園と真逆の理念を持つところで働いてたので、『こういう考えがあるんだ!』とはっとさせられました。教育的・習い事的な要素が強い園で、私も『〇〇をさせなきゃ』と思いながら保育をしてたんですよね。ここでは一人ひとりを人として丁寧に見ているけど、前の園では大人数を一気に動かそうとするというか。もちろんそのやり方が悪いわけではなく、いい面もたくさんあるんですけれども、ちょっと違和感があって苦しかったんですよね」

ーー 実際に働いてみて、大変だったことは?

「今の園長先生になってから、保育の方針をガラッと変えたんです。『互いを尊重しながら個を伸ばす』を軸に、一気に環境が変わったのでついていくのに必死でしたね(笑)。ほかの先進的な園に視察に行ったり自分たちでも勉強したりして、何年も試行錯誤を繰り返しました。保育には終わりがなくて、正解もなくて。今もまだ変革の途中かもしれないですね」

お互いを尊重するからこそ成長できる


ーー この園で働いていてよかったなと思う瞬間は?

「卒園した子たちが来てくれたときに、改めて『こどもを信頼してよかった』と感じるんです。『こうしなさい』『ああしなさい』と言わなくても、きちんと育つのがわかっているので、こどもを信頼して大人と同様に接する精神が染みついたと思います。

あと、園長先生が私たちの意見を尊重してくれる方なので、自分で物事を考えて判断させてもらえることが、すごく自身の力になっています。こどもたちにとっても、指示されたことに対して『はい!』と答えるのではなく、まず自分で考えてみることが大事なんじゃないかなと思いますね」

二人の先生からお話を聞き、園の様子を見学するなかで、こどもも大人も自分自身の声を大切にし、自ら考えて行動していることが伝わってきた。それが特別なことではなく、当たり前の文化として根付いているのが印象的だ。
こんなにも豊かな自然に囲まれながら過ごす時間はとても色濃く、きっと一生忘れられない思い出になるのだろう。

 

募集要項

募集要項

法人名 社会福祉法人 水東福祉会
園名 はつの・あそびの森こども園
所在地 熊本県水俣市初野字宮前 230
電話番号 0966-63-6721
園児数 80人
職員数 29人
募集職種 保育士
仕事内容 0~5歳までの乳幼児の保育と幼児教育
雇用形態 正規職員
給与 基本給 160,110〜171,700円
その他 各種手当
賞与 年2回 4.45ヶ月分(前年度実績)
昇給 年1回
各種手当等の詳細に関しましては、お電話・園見学等でお伝えいたします。
待遇 / 福利厚生 ・社会保険(健康保険・厚生年金)
・雇用保険
勤務地 はつの・あそびの森こども園 (熊本県水俣市初野字宮前 230)
勤務時間 7時~18時半までのシフト制
休日休暇 ・日曜/祝日
・年末年始休暇(12/29~1/3)
応募資格・条件 保育士免許、幼稚園教諭免許
求める人物像 子どもと関わることが好きで、何事にも意欲的に取り組める人。
保育に熱意のある方からの応募をお待ちしています。
選考プロセス 園を訪問いただき、面接を行う。
ホームページ http://www.hatsuno.net/

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